赤ちゃんから学ぶ
2025年10月30日 09:35
2025年10月24日(金)
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
先日、日本人が2人もノーベル賞を受賞し、日本中が盛り上がりましたね。昭和のノーベル文学賞と言えば川端康成氏の「雪国」です。書き出しはこの有名な文章で始まります。
「おかあさんの長いトンネルを抜けると、そこは 」
お腹の中にいた赤ちゃんは、おかあさんのまっ暗なトンネルをくるくると回転しながら、一生懸命出てきます。それは、人間として生きていくための最初の大冒険です。がんばったそのトンネルの先で、赤ちゃんは、歓迎の美しい雪のシャワーを浴びるどころか、母親の排泄物の洗礼をうけることになります。目は閉じているのでバイキンだらけのウンチが目を汚染する事はないものの、「おぎゃー」と産声を上げた途端に、その口に入ってくるのはまさしく母親のウンチなのです。そんな場面を想像して皆さんは思わず「ぎょぎょっ」と思うでしょう。が、しかし、出産時のプロセスでこれほど大切な自然界の摂理はないのです。
すなわち、それは赤ちゃん自身の本能行動なのです!!くるくると回転しながら、最後は自らおかあさんの肛門のある方に顔を向けます。健康な母親のウンチは決して汚い物ではなく、貴重な腸内細菌の塊です。生まれる前の赤ちゃんは無菌、母親の子宮と産道は乳酸菌で守られています。そこで、赤ちゃんは、外界に生息する悪玉菌達に対する免疫力がとても低い自分を守る為に、お母さんの腸内細菌を獲得するのですね。あらかじめインプットされた、生命維持の為の腸内細菌移入という驚異的自然のシステム、生命の神秘を感じずにはいられません。
自然界を見渡しても、同様な事はたくさん行われています。
例えば、コアラやパンダの母親は、出産後直ちに自分のウンチを赤ちゃんの口になすり付けます。これにより、毒性のあるユーカリや笹の葉を消化できる腸内細菌を獲得する事ができます。ゴキブリは産卵後、周辺に自分のウンチを残していきます。生まれたばかりの幼虫はこれを食べる事で成長に必要な腸内細菌を獲得します。
人間の赤ちゃんはなんでも口に入れてなめます。土壌菌に含まれる多種多様な腸内細菌を獲得するための非常に大切な行動なのです。
この自然界の絶妙な現象をみていますと、なんでもかんでも消毒殺菌してしまう私たちの行為は、却って自然の理にかなっていないかもしれません。外的防御の姿勢もある程度必要ですが、自然の法則に従い、体内の免疫機能を高める、すなわち多種多様な善玉菌群を不断に摂取し、自己免疫力を高める事はやはりとても重要なことといえます。